JTは何故フィリップ・モリスに負け続けるのか

 ちょうど東日本大震災直後のころ、当タイトルでJTに対するフィリップ・モリス・インターナショナル(PM)の投資対象としての優位性について述べたことがある。
 それから政府の株式放出やら何やらあって、JT株にも妙味が増してきたように思い、ついにNISAで購入に踏み切った。
 しかし、当時の分析時と比べても、平凡なROEと高すぎる自己資本比率など、本質的な部分は変わっていない。購入したのは、昨今のROE向上の流れを受けて、潜在能力の高い当社が財務政策を変更する可能性に賭けてみたためだ。
 今回は当時の投稿を引用してみることにする。

【JTは何故フィリップ・モリスに負け続けるのか】 登録日時:2011/04/19


 シェアの話ではなく、投資家にとって最も重要な、株主資本利益率(ROE)について。

 自分は非喫煙者だが、投資対象としてのたばこ銘柄は大好きだ。
  実際、フィリップ・モリスUSAを傘下に持つアルトリア・グループ(MO)や、マールボロを世界中で販売しているフィリップ・モリス・インターナショナル (PM)に投資資金の1/4近くを投じている。それらは配当利回りが5~6%と非常に高いばかりでなく、5年平均ROEが何と100%前後という信じられない利益率を誇っている(当然、PBRも12~15倍とこれまた驚異的に高い)

 一方、日本が誇るJTには今のところ興味がない。というのも、こちらは配当利回りが2%を下回る上、ROEも直近年度で8%程度と至って平凡なものに留まっているためだ。

  同じタバコという商材を扱っていながら、一体この差は何なのか。確かに、MOやPMには”マールボロ”という不朽のブランドがあるという絶対的なアドバン テージがある事は大きい。また、MOやPMは、有利子負債依存度を極限まで高め(MOの自己資本比率は14%)、てこの原理(財務レバレッジ)を使って ROEを高める手法を使っていることも大きい(ROE=売上高利益率×総資産回転率×財務レバレッジ)
 それならば、JTも経営が盤石なのだから、40%を超える高い自己資本比率を自社株買いや配当を通じてもっと切り下げ、同じように財務レバレッジを高めることによって市場価値を高めることが可能ということも考えられる。
 しかし、おそらくそれはできないのだろう。
  なぜなら、JTの株は政府に過半数を押さえられているからだ。株主構成を見ると、”財務大臣”が50%の株を握っている。更に有価証券報告書で役員の経歴 を見ると、旧大蔵省出身者がわんさといる。本社だって霞が関のど真ん中だ。まさに名実ともに半分以上国有企業なわけで、自己資本比率を下げて株主利益を追求するというリスキーな経営は許されないのだろう。

 こうして考えると、やはり今後もJTが利益面で世界トップのたばこ会社になる事は難しいのかもしれない。そういえば、東電も人事制度が非常に硬直化しており、東大出身者以外は殆ど役員になる芽がない。経済や市場とは無縁の制約は、企業の成長力や独創性を削いでしまう典型のように思われる。

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