損益増減 分析方法(基本編)

 主に営業利益を予算と、あるいは前年同期と比較する際、管理会計の実務においては下記のような内訳に落とし込んだうえで定性情報を関係者に聞きこむことが多いのではないか。直接的には製造業にしか当てはまらないが、応用すればサービス業などにも展開できると思う。

<売上面>
① 販売価格差異
② 販売数量差異
③ 品種構成差異


<コスト面>
変動費
④材料価格差異
⑤歩留り差異
⑥その他差異


固定費

⑦総額差異
⑧操業度差異

 操業度がアップすれば、製品単位当たりの固定費単価が薄まり、利益率がアップする。


 ①販売価格は利益の確保にとって最も重要な要素の一つと断言してよいだろう。
 売上高利益率が数十%あるような会社ならいいのだが、仮に5%しかない場合、1%の値引きにより利益率は4%となる。
 つまり、たった1%の値引きが、20%の減益要因となる。
 価格戦略の重要性は何度繰り返しても足りない。
 一つの銘柄を長期で安心して保有したければ、価格決定力のある企業を選ぶ必要がある。

 次に重要なのは数量確保だ。
 ②販売数量が増加すると生産量も上がるので、⑦操業度差異によってコストも安くなる。
数量増加の局面で、営業利益は比例直線を超えて二次関数曲線に近い上昇グラフを描くのはこのためだ。
 逆から考えると、販売数量減少は固定費単価上昇により営業利益率を加速度的に下落させる。この傾向は装置産業など固定費型の企業が大きくなる
 一つの銘柄を長期で安心して保有したければ、操業度差異の影響が僅少な変動費型の企業を選ぶ必要がある。

 その他の要因については、投資家が気にするようなものではないと思う。
 地道なコスト改善努力は称賛されるべきものだが、製品のコスト・利益は設計段階で概ね確定している。
 要するに、ビジネスモデルや販売戦略、製品設計などの上位ファクターと比較すると、一たび製造ラインに乗ってしまった後の改善効果など取るにならないものにしかなりえないのだ。現場にどっぷりつかっていると、この視点を忘れてしまう。
 長期投資にも同じことが言えるだろう。
 まず、マクロ経済があり、次に個別業界の見通し、個別企業のビジネス戦略、直近の財務諸表という順番。後半になるにしたがって、重要度は下がっていく。
 ただ、乗るのも降りるのも迅速に決断できる動体視力に恵まれた投資家にとっては、ミクロな情報の方が重要度が高い。私には決して備わっていない才能。そんな人間にも、投資の世界はそれにふさわしい投資方法を用意してくれているという話だ。

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