税制担当者による内部留保税制 非公式Q&A

 2017年総選挙で惨敗した希望の党のマニフェストによってにわかに注目を集めた内部留保課税について、皆の記憶から消え去る前に具体的な論点をQ&A方式でまとめることにした。荒唐無稽な税制のように見えるが、真摯な検討の中から学びが生まれるはずだ。




Q1. 内部留保税制における"内部留保"の定義を教えてください。

A1.
 "会計上の"資本剰余金、利益剰余金、自己株式を合算した額を指します。


Q2. 税制の意図を教えてください。

A2.
 事業法人のバランスシートを借入金と株主資本のバランスが取れた最適資本構成に近づけることです。本来、投資家と企業経営者が考えなければならない領域ですが、どちらも不甲斐ないので、経済産業省の要望を受けて財務省が税制に落とし込むことにしました。言われなければやらないが、ルールが出来たら適応する。それが日本企業です。


Q3. 事業で稼いだものではなく、大半は出資金で構成される資本剰余金が課税ベースに含まれるのは何故ですか。

A3.
 税制としては画期的なこととして課税ベースに会計データの使用を認めることとなりますが、課税対象を利益剰余金に限定すると、資本剰余金への振替えなどによる税逃れを容易にするため、このような措置としました。


Q4. 二重課税ではないですか。

A4.
 その質問の意図が、単純にYes or Noを聞きたいということであれば、答えはYesです。内部留保税制は二つの意味で二重課税と言えます。一つは法人税が課された後の内部留保の一部に対してもう一度課税されるという点。もう一つは、内部留保の一部で賄われていると思われる有形固定資産に対しても、既に固定資産税が課されている点です。
 しかしご質問者様が二重課税であるということをご存じであり、二重課税となる内部留保課税などけしからんと詰問する意図をもってご質問を投げかけられたのであれば、それに対する回答は「だったら何だ」です。税制はその時々の社会情勢を反映し、細かく改定が繰り返されていくものです。したがって、理論的な歪みが出るのは避けられない。事業税資本割と固定資産税、酒税・たばこ税と消費税、法人税と配当所得税も二重課税です。それとやや間接的ではありますが、法人税や個人所得税と相続税も時間差のある二重課税です。ですが、それらは二重課税となっていることを加味された上で税率が設定されています。なぜなら徴税者の最終目標は税率ではなく税収だからです。先に挙げた例のいずれか片方が廃止となり、二重課税状態が解消されたとしても、税収を維持するためにはもう片方の税率が上げられることになるでしょう。


Q5. では、二重課税解消のために法人税が減税されるのですか。

A5.
 国際競争力の観点から今以上の法人減税についての可能性は常に検討する必要がありますが、内部留保税制の二重課税問題という論点で語られるべきは、むしろ固定資産税の方だと考えております。内部留保税制の施行と同時に、事業法人に対する固定資産税を速やかに廃止いたします。


Q6. 内部留保は現金ではないので、そこに課税することは税制が意図する「現金貯め込み型経営」の是正には不適切ではないですか。

A6.
 仮に、豊富な内部留保を全て投資に振り向けて手元に現金がない事業法人がある場合、内部留保の額に見合う固定資産が存在しているはずであり、そこは先ほど申し上げた通り、固定資産税廃止によって恩恵を受けることになります。内部留保税制の施行によって納税額が純増するのは、基本的に投資をせず、現預金を貯め込んでいる企業だけになるよう設計しております。


Q7. 過度に保守的な将来キャッシュフロー見積もりによる減損などによって内部留保を過小にしておくという税逃れが横行しませんか。

A7.
 完璧な税体系はない。それが回答になりますが、税制の意図を逸脱する極端な節税行為が確認される場合、基本通達や税務調査を通じて、都度対応して参ります。


Q8. 内部留保税制によって日本経済は活性化するとお考えですか。

A8.
 当税制によって使途のない資本が配当や自社株買いによって自由市場に還元されることは確実とみており、それは広範にわたる新陳代謝を促進することになると考えております。

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